【3691】 ○ 賈樟柯(ジャ・ジャンクー) 「世界」 (04年/日・中国・仏) (2005/10 ビターズ・エンド=オフィス北野) ★★★☆

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経済成長が生み出す幻想の中を生きる若者たちの痛みや喪失感(ラストはイマイチ)。

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世界 [DVD]
世界ジャジャンクー01.jpg 北京の「世界公園」でダンサーとして働くタオ(趙濤(チャオ・タオ)は、同僚たちから姐さんと慕われている26歳。公園の守衛主任であるタイシェン(成泰燊(チェン・タイシェン))という恋人がいる。タオの元恋人リャンズー(梁景東(リャン・チントン))がモンゴルへ旅立つというので、2人は彼を見送りに行く。その帰りに立ち寄った汚い安ホテルで、タイシェンはタオに迫るが、タオは拒む。タオはホテルを出て一人で世界公園に戻るが、その後、写真館でDVDを撮っているうち、いつもの親密さが2人に戻ってくる。タイシェンは、先輩から紹介されたチュンと共に、借金を抱えているチュンの弟に会いに、太原へ出発する。ブランド品模造アトリエを経営するチュンは既婚者だが、夫は10年前ベルヴィル(パリ)に行ったきり連絡がない。言葉を交わすうちに、タイシェンとチュンは惹かれてゆくが、彼女は最後は彼の誘いをかわす。一方、タオは、ロシアから来たダンサーのアンナとの間に友情を築くが、カラオケバーでアンナが娼婦として働いていることを知り、涙を流す。タイシェンの幼馴染のサンライ(王宏偉(ワン・ホンウェイ))が、まだ若いアークーニャンとともに、北京の建設現場に出稼ぎに来るが、アークーニャンは過労と事故が重なり、病院に担ぎ込まれる。病院のベッドに横たわった彼が記すメモには、今まで自分に金を貸してくれた人の名前と金額が書いてあり、それを読んだサンライは慟哭する。アークーニャンの死後、その両親と兄が北京に上京し、補償金を受け取る。タオの後輩ダンサーのウェイ(ジン・ジュエ)は、嫉妬深い恋人のニュウ(蒋中偉(チャン・チョンウェイ))に堪忍袋の緒が切れ、別れを宣言するも、結局は結婚することを決意する。ある日の散歩中、タオはダンサーのヨウヨウ(シャン・ワン)と親会社の重役の不倫現場を目撃。そのあとヨウヨウは新しい団長に抜擢される。タオはタイシェンに自分たちの結婚の話を持ち掛けてみるが、彼は何も答えない。2人の結婚式の日、タイシェンの携帯電話には、フランスに旅立つチュンから「あなたに会えてよかった」とのメールが届く。それを読んだタオは、タイシェンの裏切りを知る。タオは、タイシェンを避け、新婚旅行に出ているウェイの新居のアパートで寝泊まりする。そこへタイシェンが現れるが...。深夜の三河鎮で、一酸化炭素中毒で1組の男女が倒れるという騒ぎが起きる。近隣住民によって中庭に運びだされたタオとタイシェンの上に、今年の初雪がちらちらと降り始める。暗闇の中、タオとタイシェンの声が響く。「俺たち、死んだのか」「いいえ、これは新しい始まりよ」―。

世界ジャジャンクー02.jpg 2004年公開のジャ・ジャンクー監督作。舞台になっているのは、北京に居ながらにして世界を回れる「世界公園」で(1993年開園)、そこには、ピラミッド、エッフェル塔、マンハッタンの摩天楼など、世界の名所旧跡が10分の1に縮小され、再現されています(日本で言えば栃木県の「東武ワールドスクウェア」のようなものか。ただし、東京ドーム約1.6個分の広さの東武ワールドスクウェアに対し、その約6倍の面積を有している)。世界を身近に体験できるテーマパークは、改革開放以後の中国の象徴とも言え、ドラマは、その「世界公園」に所属するダンサーのタオと彼女の恋人で公園の守衛主任のタイシェンを中心に、彼らを取り巻く人々の様々なエピソードを交えながら展開していきます。

 園内を走るモノレールに乗り、今インドに向かっていると携帯で恋人タイシェンに伝えるタオは、インド風のアトラクションにこれから出演するところです。別の折、フライト・アテンダントに扮したした彼女は、アトラクションの合間に作り物のコックピットでタイシェンと密会しますが、本物の飛行機を見上げる時の彼女の台詞が物語るように、彼女の周りには飛行機に乗ったことがある人間はいません。そこには「世界公園」との対比での皮肉があり、また、偽物で成り立っている「世界公園」が、中国の経済的繁栄の裏側を投影しているようにも見えます。

世界 ジャ3.jpg タオは、タイシェンの裏切りに傷つきますが、外部の世界に憧れ、彼女を閉じ込める世界で傷つきながらも、彼女を待っている人間がいるのは、結局は外部ではなく目の前の世界であることを認識しているようでした。ただし、未遂に終わったものの、無理心中(?)という選択はどうだったのかとは思いました。タオの気質にそぐわない気もするし、ネットのレビューを見ると、やはりラストへの収斂の仕方が気に食わない人もいるようです。個人的にもイマイチでした。

 ただし、急激な経済成長が生み出す幻想の中を生きる若者たちの、彼らの痛みや喪失感をリアルに描き出している映画には違いないと思います。描かれる何組かのカップルの恋愛模様は、時代や背景は異なりますが、エドワード・ヤン監督の「エドワード・ヤンの恋愛時代」('94年/台湾)や濱口竜介監督作(「PASSION」('08 年))を想起させられるものがありました。

「世界」●原題:世界(英題:THE WORLD)●制作年:2004 年●制作国:日本・中国・フランス●監督・世界」 (04年).jpg脚本:賈樟柯(ジャ・ジャンクー)●製作:吉田多喜男/市山尚三●撮影:余力為(ユー・リクウァイ)●音楽:林強(リン・チャン)●時間:133分●出演:趙濤(チャオ・タオ)/成泰燊(チェン・タイシェン)/王宏偉(ワン・ホンウェイ)/蒋中偉(チャン・チョンウェイ)/梁景東(リャン・チントン)●日本公開:2005/10●配給:ビターズ・エンド=オフィス北野●最初に観た場所:シネマ ブルースタジオ(25-08-10)(評価:★★★☆)

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